美術部 OB作品集
渡辺正則
【はじめに】 (工 昭和46年卒)
2009年6月、人生を振り返り定年退職後の新たな人生を模索するため白馬に一週間滞在した。雪をかぶった山々に囲まれた小さな山村にゆったりとした時が流れていた。人はふと出会った風景や人々に心動かされ、その後の人生が変化していくものである。私の人生の中で心動かされた風景はいくつもあったし、心動かされた人々もたくさんいた。この白馬行きを決めたのも偶然インターネットで見つけたものであるが、私は残りの人生のひとつに‘白馬スケッチ’をかけてみた。
「白馬の四季スケッチ集」では白馬の四季の風景を‘春・夏・秋・冬’に分け約70枚掲載しているが、このGalleryにその一部を紹介する。
《「白馬の四季スケッチ集」から 》
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白馬の春は四月、雪解けの姫川源流に福寿草が咲きはじめ、こぶしや桜の花が次々と咲き白馬に春が訪れる。白馬の山々の山肌にはまだまだ雪が残っているが、山から流れる空気にも少しずつ春の兆しが感じられてくる。五月頃には五竜岳の武田菱や白馬岳の代掻き馬の雪形が現れる。田んぼに水が入れられると晴れた日には白馬の山々が田んぼに映し出される。この景色を見るためには五月中旬から下旬の頃がいい。
春は気候的にも丁度いいし、雪山と新緑の美しさは言葉では言い表せない。春は白馬の一番素晴らしい季節だ。
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白馬の夏は登山者で賑わう。白馬岳のある後立山連峰には白馬岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳の日本百名山の山々のほか、白馬村から見える山として小蓮華山、杓子岳、白馬鑓ヶ岳などがある。白馬大雪渓を登り、白馬岳から小蓮華山を通り栂池に下りてくるコースや白馬岳から杓子岳、白馬鑓ヶ岳を通り猿倉に下りてくるコース。唐松岳や五竜岳にはゴンドラやリフトを利用するコースなど体力に合わせて、色々な山歩きを楽しむことができる。
また、実際に高山に登らなくても、五竜高山植物園では多くの高山植物を観賞することができるし、岩岳のユリ園では沢山のユリを楽しむことができる。
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夏の終わりに稲穂が黄色に色づき、10月上旬に栂池自然園の紅葉が美しくなる頃、白馬の秋は始まるといえるだろう。その年の気候によって早くも遅くもなる。中腹の山が赤くなり、紅葉がだんだん山麓に下りてくる。麓の紅葉は11月の終わり頃になるだろうか。紅葉がきれいな年もあるし、あまりきれいでない年もある。
いずれにしても白馬の秋の空気は爽やかで澄み渡っている。
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12月になるとスキー場に雪が積もり、スキーヤーたちが集まってくる。白馬の冬の季節の始まりである。今まで静かだった町中にも若者たちの声が飛び交い白馬は活気を呈してくる。しかし、田や畑、家々も雪に埋まり辺りは白銀の世界となる。毎日のように雪が降り地元の人々は雪掻きに忙しい。それでも2月末頃には晴天が増え気持ちも楽になるようである。
冬の白馬の快晴の景色は美しい。真っ青な空、白銀の山々、凛とした空気。そんな非日常の世界を求めて私の旅は続く。